フィラリア症大辞典

犬フィラリア症とはどんな病気?
犬フィラリア症とは、フィラリア(糸状虫)が犬の肺動脈や心臓に寄生することで、呼吸器や血液循環、その他の臓器に障害を与え、時には命にかかわる怖い病気です。
このページでは、フィラリアがどういう経路で感染し、どういう症状を引き起こすのか、また、感染させないための方法や予防薬の投与に関して詳しく書いていきます。
フィラリアを正しく知ることで、愛犬を命の危険から守りましょう。
フィラリア症の感染経路
フィラリアは蚊を媒介し感染します。
日本では、約16種類の蚊がフィラリアを媒介することで知られていますが、その中でも「ヒトスジシマカ」、「アカイエカ」の二種類が多いと言われています。
どういった段階を踏んで感染するのかを箇条書きで書いていきます。
- フィラリアに感染している犬の血液を吸う際、ミクロフィラリア(血液中の幼虫)を一緒に取り込む。この時に蚊の体内に入り込みます。
-
蚊の体内で2回の脱皮を経て、犬への感染能力が備わります。
※幼虫は14℃以下の気温では成長できないため、冬の間は地域によって、予防しなくても良いのはこのためです。 - 感染能力を持った幼虫は、蚊の血を吸う器官に移動し、蚊が犬の血を吸うのを待ちます。
- この蚊が犬の血を吸う際に、針から犬の体内にミクロフィラリアが入り込みます。
犬の体内に侵入しただけでは感染したことにならず、当然のようにこの時点では犬には何の症状も現れません。
犬の体内に侵入したミクロフィラリアは、皮下・筋肉で成長します。
成長したミクロフィラリアは血管に侵入→心臓や肺動脈に寄生し、なお成長し続け、3~4か月後に成虫となり、子虫を生み出し始めます。
フィラリア症の症状
フィラリアの症状はすぐには発症しません。
犬が蚊に刺される回数や寄生数、感染部位によって1~2年で症状が出る場合や、10年以上経過してから症状が出る場合もあります。

初期の症状
- 咳、疲れやすい
- 運動や散歩を嫌がる
- 食欲がない
重度の症状
- 呼吸が浅い(速い)
- 貧血(散歩、運動中に失神)
- 腹水がたまる
- 血尿
- 咳に血が混じる
フィラリア症の怖いところは、咳以外ほとんど症状がないまま突然悪化し、呼吸困難や重度の貧血などを経て、数日以内に死亡してしまう症例があることです。
愛犬がフィラリアに感染する確率ってどれくらい?

室内犬が主流になり、予防法が確率されているとしても完全にフィラリアを防ぐことは不可能です。
では、どれくらいの確率で愛犬がフィラリアに感染してしまうのでしょうか?
フィラリア予防をしないで夏を過ごした場合の確率
- 1年目:約38%
- 2年目:約90%
- 3年目:約92%
これらはネット上にある情報の一部です。
ここからは私の体感でお話させていただきます。
私の田舎は東北ですが、もう数年以上フィラリアは発生していないとのことです。
全ての蚊がフィラリアを持っているわけではなく、また、フィラリアを持った蚊自体、ほとんどいないのではないかと予想できます。
中には、検査は年に数回行っているが、フィラリア予防薬自体は数年やっていないという方もいます。※もちろん室内飼いの子です。
どんな薬にも副作用はつきものです。
飼い主さんが、効果と副作用の双方を照らし合わせて、フィラリア予防の必要性を考えるべきかと個人的には考えます。
犬フィラリア症の検査
フィラリアは予防することで100%防げる病気です。
しかし、ただ予防薬を投薬すれば良いわけではありません。
フィラリア症の検査に関して詳しく書いていきます。
事前検査の必要性
フィラリア予防薬を投与する際に、事前にフィラリアに寄生されていないかを確認しなければいけません。
愛犬がすでにフィラリアに寄生されている状態で予防薬を投与することで、一度に大量のミクロフィラリアが死んでしまい、アナフィラキシーショックを引き起こし、命に関わる場合があるからです。
そもそもフィラリア症の症状は、初期段階では非常にわかりづらいため、検査は非常に重要です。
どんな検査なの?
血液中のフィラリアを顕微鏡で探す検査が主流でしたが、現在は検査キットでフィラリアの抗原を確認し、心臓への寄生の有無を調べる方法があります。
検査はミクロフィラリアが検出されるようになってから
そもそもフィラリアの検査の目的は、前年にフィラリアに感染したかどうかを確認するためのものです。
血液検査で確認できるのは、成長した幼虫が血管内で検出されるようになってからとなります。
前年で最後に感染する可能性があるのは10~11月となります。
そこからフィラリアが成長するまで約半年と考え、検査を実施するのは5月頃が適切といわれています。※地域により変動があるため、かかりつけの獣医師さんの指示に従ってください。
犬フィラリア症ってそもそも治るの?

フィラリア症は、心臓や肺動脈に寄生することで様々な症状をもたらす病気です。
寄生状況、症状の度合いや犬の年齢などにより、治療内容が変わります。
外科手術
肺に寄生している成虫をつり出し、摘出する方法となります。
麻酔のリスクや、技術が必要なため、すべての子が行えるわけではありません。
大量に寄生されている場合や、体力のある子に行われる場合があります。
薬剤での駆除
※フィラリアの駆虫薬であるイミトサイドは、日本での販売は中止となっています。
死滅したフィラリアが血管に詰まることで、症状が悪化してしまうリスクが伴います。
肺動脈の状態により、命に関わる場合があるため、投薬には獣医師の適切な判断が必要です。
フィラリア予防薬の長期投与
フィラリア症の症状が出てない状態で、さらに成虫の感染数が少ないのであれば、通常とは異なる予防薬の投与方法で、成虫を自然に減少させる方法です。
しかし、一度寄生された部位には障害は残ります。
対症療法
体力や年齢、症状の状態などで、外科手術、薬剤での駆除ができない場合は、体内のフィラリアには何もせずに、症状のみを緩和する対症療法です。
この場合、自宅では栄養価の高い食事や、血管や心臓に負担をかけないように安静に過ごすなど、根気が必要です。
それでも、急激に症状が悪化した場合は覚悟が必要です。
犬フィラリア症の注射について
フィラリア予防にはお薬だけじゃなくて、注射もあるってご存じですか?
しかも、一度注射してもらうだけで1年間も効果が持続するとかなんとか…
フィラリア症の注射について詳しく書いていきます。
注射のメリット
一番のメリットとして挙げられるのは、やはり1年間効果が持続するということではないでしょうか。
毎月投薬の日をうっかり忘れてしまったりという心配がないのはうれしいですね。
また、春はフィラリアの検査の時期でもあるため、非常に動物病院は混みます。
1年効果が持続する注射は、冬にやってしまえば、春の混雑を避けることができます。
注射のデメリット
かなり低い確率ではありますが、発熱、顔のむくみ、重篤なものではアナフィラキシーなどの副作用が起きる場合があります。
費用
費用に関しては動物病院によってさまざまですので、だいたいこれくらいかかるという参考にしてみてください。
体重 | 料金 |
---|---|
5~10㎏ | 8,000円 |
10~20㎏ | 10,000円 |
20~30㎏ | 15,000円 |
30~40㎏ | 18,000円 |
フィラリア予防薬を飲ませ忘れた!大丈夫?

フィラリア予防薬を飲ませ忘れてしまうことって、実は結構多いケースだったりします。
- 気づいた時には数日過ぎてた
- あれ?なんでひと月分多いんだ?
- ひと月分忘れてた
などなど…
かなり焦りますが、実際のところどうなんでしょうか?
飲ませ忘れた場合は?
実は飲ませ忘れてしまった場合でも、1か月忘れであれば問題なかったりします。
犬の体内に入ったミクロフィラリアは、成長するまでの期間が約2か月かかります。
その間に駆除できれば大丈夫なんです。
ただし、フィラリア予防薬を吐き出してしまったり、きちんと投薬できてなかった時のためにも、確実な予防を実現させるためには、忘れないように投与するようにしましょう。
寒くなってきたからフィラリア予防薬はもう大丈夫かな?
寒くなってきたし、蚊もいないだろうから、もう投薬しなくて良いかな…
なんて思ってる方へ。
獣医師から指示を受けた期間が終わる前に投薬をやめてしまった場合は感染してる可能性があります。
予防薬を投薬する際は、必ず獣医師の検査を受けてからフィラリア予防薬を飲ませるようにしてください。
フィラリアに感染させないためには?
フィラリア症は、忘れずにしっかり予防することで100%防げる病気です。
確実にフィラリア症を予防するためには、フィラリア予防薬の投与が必須です。

フィラリア予防薬
フィラリア予防薬は、錠剤、滴下式(スポットタイプ)、チュワブル(おやつタイプ)の3種類があり、いずれも、フィラリアが体内へ侵入するのを防ぐのではなく、すでに体内にいるフィラリアを駆除するためのお薬です。
投薬期間は、蚊が飛ぶようになってから1か月後~蚊がいなくなってから1か月となり、地域によって気温が違うため、お住いの地域の気候に合わせて投薬期間を定める必要があります。
フィラリアQ&A

- 赤ちゃんでもフィラリア予防は必要ですか?
-
生後二か月から必要になります。
- フィラリア予防薬を飲み始める時期は?
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蚊の活動が一年中の地域は冬でも予防薬を飲ませる必要があります。地域により差異がありますが、蚊が見え始めて1月後から投薬開始、蚊が見えなくなってから1か月後までとなります。
- なぜ冬に蚊がいなくなってるのに1か月後まで投薬が必要なの?
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予防薬は吸血されないための薬ではありません。体内に幼虫が残っている可能性があるため、蚊がいなくなってから1か月後まで投薬の必要があります。
- 最後の投薬を忘れても大丈夫ですか?
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フィラリアに感染する可能性が高くなり、それまで継続して投薬していたことが無駄になってしまう場合もあります。かかりつけの動物病院の指示を守り、自己判断での投薬中止は絶対にやめましょう。
- フィラリア症は治りますか?
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治ります。しかし年齢や寄生状況により処置方法が変わります。主に外科手術での成虫摘出、薬剤による成虫駆除、予防薬の長期投与となります。
- 猫もフィラリアに感染するのですか?
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猫もフィラリアに感染するため、フィラリア予防薬の投薬が必要です。
- 人間にも感染しますか?
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感染します。73か国で1億2千万人以上が感染しているといわれ、感染するとリンパに大きなダメージを与え、象皮病などの症状を発症する場合があります。西郷隆盛もこの病気だった事が知られています。
まとめ

かつて、犬は外飼いが主流でした。
また、フィラリアの予防は一般的ではなく、犬の死因として常に上位に挙げられるのもフィラリアでした。
昨今、ペットブームと共に予防についての知識が広がることで、フィラリアが原因での死亡は圧倒的に少なくなりました。
しかしフィラリアは根絶したわけではありません。
フィラリアは、予防さえすれば100%防ぐことができる病気です。
愛犬を守ることができるのは飼い主さんしかいません。
正しい知識と責任を持ち、愛犬をフィラリアから守りましょう。